気管切開をあわててしない
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気道確保が緊急に必要な場合,行なうべき処置は気管内挿管である. あわてて気管切開を行なってはならない. 速力・容易さ・合併症の少ないことなど,気管内挿管の方が遥かに優れているからである.心停止と心蘇生にまつわる気道確保も,当然気管内挿管を施行する. 心蘇生から2,3日を経過してなお気道確保が必要なら,気管切開が必要かもしれない.その場合は患者の全身状態をおちつかせ,気管切開施行の周囲の条件も整える.清潔・施行者の技術・器具・照明・麻酔などの条件を整えて施行するのである.施行はなるべく上手な耳鼻科医・外科医に委嘱する. 心蘇生の途中で慌てて気管切開を行わないこと.
注釈: ずっと以前には,気管内挿管は一部の医師の特技だった.気管切開なら誰でも何とかなるので,「緊急気道確保は気管切開」というルールが存在したのである.現在では気管内挿管の技術は広く行き渡っているので,そちらを優先する.
蛇足: 1)麻酔の気管内挿管はヘマではいけないし,失敗も許されない.しかし,蘇生のための気管内挿管は生命と引き換えであるから,拙速でよい.
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諏訪邦夫
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