電子版麻酔学教科書

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  新しい心肺蘇生法 − 胸骨を引っ張る方法 #18
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月11日 13時49分
新しい心肺蘇生法 − 胸骨を引っ張る方法

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従来の心マッサージは,胸骨を圧迫するだけで,圧迫からの復帰は患者の弾力に任せていた.これを変えて,往復に力を加えようと工夫したものである.実に単純な発想だけれど,いかにも効果がありそうで面白い.


[目的]
新しいCPRの工夫を記述し,在来法と比較する.まったくコロンブスの卵のような小さな工夫だが,非常に効果があるようで案外重要な手法になるかもしれない.

[背景]
従来の胸骨圧迫式CPRの欠点を完全に覆した方法.そもそものいきさつは,まったくの素人の方が,自分の父親の心臓発作の際にトイレの吸引カップを使用してCPRし,それがうまくいったのを見た医師が真面目に検討しはじめたとか.

[研究の場]装置作成と臨床の場での使用と測定

[対象]標準的CPRが効かなかった患者

[使用機器]
あらたに作成した蘇生装置.直径14cmの円盤で,一端にハンドルがつき他端は吸盤.胸骨附近におしつけて上下させる.ACD(Active compression-decompression device)と命名している.

[測定項目]
循環動態のパラメ−タ−と呼気二酸化炭素(PETco2 ).心臓エコー

[方法]
一応コントロール臨床試験.各患者を2分ずつACD使用と通常法とを交互に使用し,その間に各種パラメ−タ−を測定する.

[解析]
エコーは心拍出量・拡張期の充満状態などの解析

[結果]
PETco2 は通常法で4.3,ACD法で9mmHg
収縮期圧は通常法で53,ACD法で89mmHg
一回拍出量は通常法で7,ACD法で17
通常のCPRを1時間施行して無効だった患者10例中,3例でACD法2分で循環動態が安定して蘇生できた.
装置の写真(“研究用機器”という文字あり),患者の条件,上記のデータの各個体のグラフ,動脈圧のトレーシングなど掲載.
市販型が製作されている由.圧迫と牽引の部分は自動車のハンドル型で,胸骨側は密着性のよいパッドがつき,圧表示メーターが付属.特許申請中.

[結論]
ACD装置で,通常のCPRの無効な患者を蘇生できる可能性がある.ただし,長期的な生存への影響や多数例への効果は不明である.
A new method of cardiopulmonary resuscitation. Cohen TJ, Tucker KJ, Lurie KG, Redberg RF, Dutton JP, Dwyer RN, Schwab TM, Chin MC, Gelb AM Sheinman MM, Schiller NB, Callaham ML. JAMA 1992:267:1916-23.


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諏訪邦夫

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