ペインクリニックのアウトライン
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行うこと:局所麻酔薬による神経ブロック
組織 患者の分布 治療:神経ブロック 治療の問題点 帯状疱疹を例に 帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の関係
ペインクリニックの人員構成 フルタイム医師 2 パートタイム医師 (手術室の麻酔も担当) 3 ナース 2 事務 1
ペインクリニックの設備
外来: 診察室 3 処置台 4(手術台類似) スペース 20m×7m 他に,ロッカーと休憩用の小さい部屋 入院: 病床 5 (うち個室が 1) ブロックはほとんどが外来で施行
ペインクリニックの活動 患者数 20〜30人/日 延べ6000人/年 新患数 250〜300人/年 入院患者: 各科の患者を含
疼痛治療は時間がかかる 処置に要する時間 ブロックそのものの時間 ブロック終了後の臥床時間
ペインクリニックの新患分布 悪性腫瘍関係 32 帯状疱疹 38 帯状疱疹後神経痛 26 反射性交感神経失調 11 顔面痛 20 頭痛 14 顔面痙攣 5 顔面麻痺 17 腰痛・背部痛 27 肩痛 6 三叉神経痛 (急速に減少) 8
ブロックの種類
半数が星状神経節ブロック 他に 硬膜外ブロック・仙骨ブロック 肋間神経ブロック 局所浸潤 三叉神経ブロック・顔面神経ブロック 交感神経ブロック(星状神経節ブロック以外) 後頭神経ブロック
アルコール・フェノールによる神経破壊処置 三叉神経ブロック・顔面神経ブロックの数
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帯状疱疹とペインクリニックの関係
帯状疱疹という病気のこと 帯状疱疹は痛い 皮膚に水疱ができる しかし,それだけでなくて“痛い” 帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の関係 急性期の痛みを治療するか ブロックで帯状疱疹後神経痛が抑えられるか
帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の関係 帯状疱疹とは 水疱ウイルス 脊髄神経節に住む 身体の抵抗力が低下すると発症それで,高齢者・悪性疾患患者などで 帯状疱疹後神経痛とは 帯状疱疹の急性皮膚炎がおさまり水疱が治り,皮膚が乾燥して軽い変色をのこすだけになる.ところが強い痛みが残る.
比率と年齢 若年者では 1%〜5% 高齢者では 10%以上
診察を担当する医師 帯状疱疹の急性期は,皮膚科と一般医師 帯状疱疹後神経痛は麻酔医
帯状疱疹の痛みに対する認識・感覚 “すぐに治る”:患者の大多数 “頑固に残る”:患者の少数 一般医は 帯状疱疹は治る と“思う” 麻酔医は 帯状疱疹は治らないと“思う”
ところが,麻酔医は“まれに”急性期の帯状疱疹をみる ブロックを施行する 治る
疑問: 急性期の交感神経ブロックで帯状疱疹後神経痛になるのを防げるか?
答え: 現時点では“防げる”証拠はない 証明はコントロール臨床試験が必要 コントロール臨床試験は未施行 誰が施行すべきか
但し: 急性期の交感神経ブロックで 痛みが抑えられることは確実
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ヘルペス後神経痛 −−認識の差が生ずる計算例−− ヘルペス後神経痛について,これを疾患初期に診察する医師(皮膚科,内科の医師)と疾患が確立してから診察する医師(麻酔科,ペインクリニックの医師)の間に認識の差が存在する.そうして,それにはまことにもっともな理由がある.それを簡単な計算で示そう.
麻酔医: 急性期の患者を診ることもあるが,慢性期の患者を診ることも多い.例えば, 急性期患者 10人 ブロック施行 治癒 慢性期患者 10人 ブロック施行 難治 「だから急性期にブロックが必要」と認識する.
他科の医師:たとえば皮膚科医師. 急性期の患者を診ることは多いが,慢性期の患者を診ることは稀.例えば, 急性期患者 10人 ブロック施行せず 治癒 慢性期患者 0人 だから「ヘルペス後神経痛は“存在しない”」というわけ.
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諏訪邦夫
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