硬膜外モルフィンによる鎮痛
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[対象と使用薬液]
硬膜外腔にモルフィンを注入すると,当該部位の鎮痛が得られる. 投与量は1分節当り0.2〜0.5mg程度.総量として2mg以下. 作用の開始は遅く約1時間経過してようやく明確になる. 持続は6〜12時間位. [用途]
術後の鎮痛に有効(局所麻酔薬に比較して血圧下降が多くない.). 癌末期などの難治疼痛にも,場合により有効. 手術の麻酔としては麻酔力が弱く,また交感神経系ブロックも得られないのが好ましくないので,あまり利用されない. モルフィンの他にフェンタニルやブプレノーフィンなども使用する. [メカニズム]
脊髄にモルフィン受容体の存在が判明しているので,モルフィンはここに作用すると考えるのが素直である.しかし,「受容体が存在する」のと,それが「本当の作用点」というのは別問題で,硬膜外麻薬の作用は全身投与と差がないとの主張もけっこう有力である.あるいは,薬物によって効果が異なる,との考えもあるようだ.たとえば,モルフィンは脊髄に効く要素が強いが,フェンタニルでは全身(つまり脳)に効くともいう. [合併症]
麻薬の使用量が少ないので,全身投与に比較すれば合併症は多くない.しかし,いちじるしい呼吸抑制・呼吸停止も報告されている.特に,モルフィンでは稀でないともいう.何事も絶対安全という方法はないという例 キーワード:モルフィン受容体,術後鎮痛
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諏訪邦夫
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