重症患者の動脈血酸素状態をコンピュータプログラムで解析する
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[目的] コンピュータプログラムを使用して,血液分析からできるだけ多くの情報を得ることを試みる.使用するプログラムは Siggaard-Andersen のいわゆる“OSA”.
[測定項目]FIo2 ,動脈血血液ガス,Sao2 の直接測定
[対象]115の動脈血
[方法] 血液ガス分析値の他に,ヘモグロビン・メトヘモグロビン・一酸化炭素ヘモグロビンの測定値
[解析] OSAから推定する項目はP50,2,3DPG濃度,シャント率,心拍出量と酸素消費が正常と仮定した混合静脈血の酸素化パラメーター, 酸素配達(Do2:Oxygen Delivery),酸素消費(Vo2: Oxygen Consumption ),組織酸素化(このパラメーターは説明).
[結果] Sao2 が97未満の場合,上記のパラメーターは上のデータだけで充分正確に計算できる. ただし,ICUで患者のケアにあたって,FIo2 を高くしたり循環のことを注意した場合,Sao2 <0.97という条件は達成できないこともある. この際に,同時採血した静脈血があると,Sao2 >0.97でも計算が可能になる. 実測と比較したわけではないが,OSAのアルゴリズムによる2,3DPGはなかなかいい線をいっている. 重症患者の酸素解離曲線は右方移動している場合が多い. OSAが規定している(“提案している”というべきか)Po2 uv- と CQ というパラメーターはそれなりに有用なようである.ただし,心拍出量や酸素消費の変化が急速な場合は問題がある.
[結論]OSAはそれなりに有用である.
抄者註:このプログラムは Siggaard-Andersen の“OSA”で,1990年の長野市の日本麻酔学会総会で作者が詳しく述べている.改訂版は単位などが使いやすい.Radiometer 社から入手可能である.IBM互換機で動く.
The oxygen status of the arterial blood in the critically ill. Tulli G, Vignali G, Guadagnucci A, Mondello V. Scand J Clin Lab Invest Suppl. 107-18,1990
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諏訪邦夫
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