体温の異常
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概念: 体温の異常は,上昇も下降も回復室滞在中に処置してしまうことが望ましい. 一般病棟ではモニター機器も処置の器具も,回復室ほどには備わっていない.たとえば,加温や冷却用のブランケットをもたない病室も少なくない.病室の医療担当者も,体温管理に慣れていない.
加温: 加温のみなら家庭用の電気毛布も有用.“ベアハッガー”と称する温風器は,もちろん有用.赤外線で加温する型のものも有用. 体温下降への処置は,他に重大な合併症を伴わなければ急がなくてよい.呼吸循環に注意しながらゆっくりとあたためる.血液や輸液の加温・吸入気の給湿(特に加温タイプの給湿器使用)も有効である. 血液・輸液の加温は,循環や代謝を活発化して体温を上げる効果もあるので,作用は一通りでない. 体温が常温より数度も低い場合,最初の0.5度か1度上げるのに,骨が折れて時間がかかるのが通例である.一度上昇が始まると,あとは速い.
冷却: 体温上昇の処置は,急ぐ必要がある. 悪性高熱の可能性もあり,たとえ悪性高熱でなくても障害が大きいからである. ブランケット. 多数の氷嚢.
小児なら,ガーゼで巻いてアルコールを散布して,蒸発熱で冷却する. 薬物 ドロペリド−ル(2.5〜5mg) クロ−ルプロマジン(血圧に注意しながら,1〜10mg静注)
蛇足: 私の馴染みのニューヨーク,コロンビア大学のプレスビテリアン病院は,アメリカでは超一流病院とされるが,驚いたことに体温測定に手術室では摂氏を,回復室では華氏を使っていた.1984年に驚いたが,1992年でも同じだった!手術室は医師が管理し,回復室はナースが管理することが理由だという.
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諏訪邦夫
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