回復室で血圧が下がったら
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回復室で血圧の低下するメカニズム 頻度の高いのは,循環血液量の不足(ハイポボレミア)である. 頻度的には,手術中の出血に対して何とか輸血を回避しようと努力した結果として発生する場合が多い. 手術中に,浅い麻酔と手術刺激で交感神経系の緊張状態が保たれていて,手術終了でこれが絶たれて血管拡張の起ることもある.特に,術後鎮痛のために硬膜外の局所麻酔薬を加えたり,鎮痛薬を与えたりする場合に発生しやすい. 手術終了近くに,尿量不足に気付いて利尿薬を投与して,それがこの時点で効果を発揮することも原因となる. 他に,頻度は低くいので気付きにくいメカニズムとして 低体温 電解質異常 低血糖 膀胱膨満:高血圧が多いが,低血圧反応も知られている. まだまだいろいろありそうである.
[治療] まず速効性の昇圧剤を投与しておく.例:エフェドリンを4〜8mg. それから,十分の輸血・輸液を与える.輸液としては晶質液にこだわらず,血漿製剤や代用血漿の使用も考慮すること. 輸血は避けたい場合が多いが,避けようとして時には後悔する.
[注意] 持続的な出血もある.頻度は低いが,感覚を研ぎ澄ませて,納得がいかなかったら術者に知らせること.私自身の経験は,心臓手術以外には数回程度だろう.
キーワード:ハイポボレミア,出血,輸血,輸液,交感神経系,昇圧薬
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諏訪邦夫
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