電子版麻酔学教科書

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  麻酔中の覚醒を利用した禁煙 #21
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月11日 20時09分
麻酔中の覚醒を利用した禁煙

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麻酔中の覚醒を利用し,逆にサジェスチョンを与えて貰って禁煙できるかもしれない.
[背景]
五感の中で,聴覚は全身麻酔で最後まで残るので,麻酔中の“ Awareness ”の問題は聴覚を介するものが重要度が高いという.手術後に患者が担当医を憎んだり,訴訟を起こしたりする場合,実は術中に不用意に発した医師の言語を患者が意識下か無意識に記憶して,行動に移すのだという説もある.
禁煙を望む患者は数多いが,全身麻酔の術中のサジェスチョンが有効なら,禁煙の動機付けの経路がもう一つできることにもなる.でも有効だろうか.
術中に禁煙のサジェスチョンを与えて,術後の患者の喫煙状況を調べると,聴覚の生理がわかり同時に禁煙の目的も達成できて一石二鳥であろう.
[目的]
全麻中の聴覚保持を検討し,術中の禁煙サジェスチョンが術後に効果を残すか否かを調べる.
[対象]
50例の検査群と50例の対照群.女性.
[使用機器]
テープレコーダーとヘッドフォン
[方法]
麻酔導入後,テープに録音したメッセージを反復.「タバコをやめよう」「タバコはやめた方がいい」「タバコはいいことが何もない」「タバコはやめられる」といった短い文章.対照群は数字読み.
麻酔方法は吸入麻酔薬を中心としたふつうの全身麻酔で,浅く保つ努力は特に払っていない.
[結果]
術後に喫煙を停止した患者が,検査群に8例いたが,対照群ではゼロであった.
喫煙量の減った患者は,検査群で18例,対照群で10例であった.
喫煙量の増えた患者は,検査群は1例,対照群で6例であった.
術後喫煙量は検査群10本,対照群15本.
麻酔医は予防医学の領域でも活動できるか.
[解説]
われわれは,意識の問題は特に浅い麻酔だけと考える傾向が強いが,通常の麻酔でも残っているということかもしれない.「麻酔中のサジェスチョンの方が,通常の禁煙教室より有効」かどうかは別問題だが,このデータはなかなか強烈である.
文献 Hughes LA, Sander LD, Dunne JA, Tarpey J, Vickers MD. Reduceing smoking. The effect of suggestion during general anaesthesia on postoperative smoking habits. Anaesthesia 49:126-128.1994.


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諏訪邦夫

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