EKGモニター
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[対象と装置] 原則として麻酔の全例に適用. 1チャンネルでよいが,勿論CRT(ブラウン管)が中心. 異常な波形がでた場合は記録計に記録する.
[施行法と結果] 電極は右腕と胸壁第5誘導の位置に(V5誘導変法:電位がおおきく雑音に強い). ハムは電極の装着不良の場合がほとんど.電解質液で濡らせば消える.
[判定と問題点] 心臓の電気現象と循環動態との相関は必ずしも高くない. 不整脈・期外収縮・STの変化・極端な頻脈の診断に有用
付:EKGのノイズと接触抵抗
[ハムの解決法] 手術室での心電図モニターで,交流のハムに悩まされたら,原因は皮膚と電極との接触抵抗である.電極を皮膚に対してゴシゴシこすりつけるか,生理食塩水のような電解質液をしっかり加えればハムは消える.
[理由] 原理的に言えば,“抵抗が大きい”から“ハムを招く”メカニズムが著者には分からなかった.手術室に出入りする電気技師にいろいろ尋ねたが,誰も答えてくれなかった.おそらく20人位の人に質問したのではないだろうか. 何年かの探索の後に,YHP社の技師土井氏からついに満足できる答えを得た.その解析によると,理由はこうである. EKGは一般に電極間に逆相で信号が入る.つまり腕に+1V,足に−1Vが入って合計2Vの信号として捉える. ところが交流のハムは身体のどこでも同相である.つまり腕にも足にも,たとえば+0.5Vである.したがって電極が正しく接触していれば,交流のハムは差引きゼロになる. 一方の電極が正しく付いていないで抵抗値が高い場合,EKGは単極誘導になるが一応得られる.しかし,交流ハムは差引きゼロにならないのでハム残るということである. なお,以上の土井氏の説明は一応の説明だけでなく,実験結果に基づくものである.
ハムが電極からでなく,本体自体に原因のあるときは故障の修理が必要.
蛇足: EKGとECGは両方使用する.前者は,ドイツ語の略語のはずだが,実際には英語でも使用する.もちろん後者も使用する.前者はアメリカ東海岸でつかうと聞いたが,詳しくは未確認.両者の発音も,もちろんイーケージーとイーシージーである.
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諏訪邦夫
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