呼気炭酸ガスモニター
--------------------------------------------------------------------------------
[対象と装置] 従来からの使用と,最近の考え方とはかなり変ってきた.従来は, 体内の炭酸レベルの調整, 肺循環動態の変動のチェックとして(心臓手術,坐位の脳手術)
最近,諸外国では警報装置として使用するようになってきている.つまりモニターとしての使用である.
[モニターとしての使用] 呼気には5%程度の炭酸ガスがふくまれている.これをチェックすれば“たしかに呼吸をしていることが確認できる”.炭酸ガスの測定で呼吸を確認するのは比較的最近アメリカで普及した方法である.この話をはじめて聞いた時は“呼吸の確認だけのために高価な測定器を使うなんて”と感じたが,これは私の誤りであった.呼吸の確認は重大なことで,必要として普及すれば装置の価格はどんどん下がってくる.もっともアメリカで普及したのは独特の事情もある.患者が太っていて気管内挿管が難しく,こうした特殊な装置を使用しないと挿管成功の確認が困難なことが日本よりもずっと多いからである.医学や医療の進歩には国民が不健康な方が望ましい,といったらもちろん問題の立て方が逆だが,それにしても興味深い.
[施行法と結果] 赤外線分析によるものが標準だが,一部では質量分析も使用する.呼気終末Pco2 でPaco2 を類推する.心拍出量が低下したり肺空気栓塞が起こると変化が検出できる. モニターとしては気管内挿管の確認(食道挿管なら炭酸ガスがでてこない−挿管困難な場合.肥満で聴診不能な場合)と呼吸持続の確認(呼吸停止.人工呼吸器の接続不良)にも使用する.
[判定と問題点] 呼気終末Pco2 とPaco2 の相関は,重症患者ではあまり高くない. 1995年の時点で,東京大学医学部附属病院のシステムはマススペクトロメーターを使用した時分割である.
これが導入されたのは1989年で,その時点では優秀であったが,その後開発された赤外線吸収による単体と比較すると欠点が目につくようになった. ただ,気道内二酸化炭素をモニターするのなら同じことではあるが. 約2分の遅れがある.
ひ弱なサンプリング管を壁まで長距離(といっても数メートルだが)引き回すために,つまりや漏れを生じやすい. 真のリアルタイム装置なら,手動の換気を替えてみて二酸化炭素曲線のパターンが変ることを実感できる.それが,東大の装置ではできない.これが一番重要だろう.
文献: Harken AH. Hydrogen ion concentration and oxygen uptake in an isolated canine hindlimb. J Appl Physiol 40:1-5. 1976. Khambatta HJ, Sullivan SF. Effects of respiratory alkalosis on oxygen consumption and oxygenation. Anesthesiology 38:53-58.1973.
キーワード:人工呼吸器のはずれ,食道挿管,空気栓塞,警報装置,
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |