電子版麻酔学教科書

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  イートン=ランバート症候群(非脱分極性筋弛緩薬の使用) #8
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月10日 15時48分
イートン=ランバート症候群(非脱分極性筋弛緩薬の使用)

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筋無力症の一つの形である.


発症:
20歳から50歳,ゆっくり進行する.死亡は60歳以降.

主訴:
筋力の減退,特に下肢筋筋力に顕著.顔面筋・脳神経支配下の筋はやられない.真性の筋無力症と異なり,“活動すると力が出る”.

病態生理:
気管支の癌に併発するが,他の癌でも胸部・肺に転移すれば発生(前立腺,胃,直腸)骨格筋の神経筋伝達に限定された病気でなく,自律神経系にも障害が出る.

例:便秘,尿閉,起立性低血圧
電気生理学的には,単収縮刺激に対する反応は低下するが,テタヌス刺激に対する反応は強くなる.筋無力症と逆である.

メカニズム:
神経終板でアセチルコリンを出すのに必要なカルシウムのチャンネルの故障.
自己免疫疾患と考えられるが,抗体は発見されていない.

[麻酔と術後の問題]
筋弛緩薬に対して敏感である.サクシニルコリンにも非脱分極型薬物にも同様の作用がある点が,筋無力症とことなる.
ネオスティグミンは無効.塩酸グアニジンが著効という.
作用時間の短い非脱分極型薬物(ヴェクロニウムなど)でも,長時間作用する可能性がある.
McEvoy KM, Winderbank AJ, Daube JR, Low PA. 3,4-Daiminopyridine in the treatment of Lambert-Eaton myasthenic syndrome.New Eng J Med 321:1567-71.1989.
 ランバート=イートン症候群は,筋無力症の一つの形であるが,気管支の癌に合併することが多い.他の癌でも胸部・肺に転移すれば発生する.
真性の筋無力症と異なり,


“活動すると力が出る”のと,
自律神経系にも障害が出て便秘,尿閉,起立性低血圧などの症状を招く
のが特徴である.
 神経終板でアセチルコリンを出すのに必要なカルシウムのチャンネルの故障.自己免疫疾患と考えられるが,抗体は発見されていない.
 この疾患患者10例にタイトルの薬物(アセチルコリンを増量する)を与えて,神経学的検査でその効果を評価した.骨格筋筋力は向上し,自律神経系の症状も改善が見られた.1例で10ヶ月後に痙攣発作が起こった.


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諏訪邦夫

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