電子版麻酔学教科書

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  ベクロニウム(ヴェキュロウニアム) #35
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月10日 17時57分
ベクロニウム(ヴェキュロウニアム)

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化学と薬理:
パンキュロニウムの構造をほんの少し変えることによってできた,新しい非脱分極性筋弛緩薬.
作用時間はパンキュロニウムの半分.
循環動態は安定,血圧の変動なく,心拍数も変化しない.
作用の消褪は肝臓での代謝であって,腎からの排泄の要素はないとされている.

実際:
初回が0.1〜0.2mg/kgであとは半量〜1/4量を追加する.
手術の終りに近い時点でも安心して投与しやすい.
作用開始も速いので,麻酔の導入挿管にも使用可能.
手術が長いときは,初めと終わりにベクロニウムを使用して,中間部はパンクロニウムを使用するのも合理的である.

モニタ−:
作用時間が短く反復回数が多くなるので,蓄積の可能性は高い.長時間の使用に際してはモニタ−を使用することが望ましい.

合併症:
肝からの代謝に依存するので,肝障害患者に使用するには厳重なモニタ−が必要である.
 参照 症例:肝機能障害患者でのベクロニウム

費用:
1994年の時点では,新しい薬物の故もあって単価が高く,おまけに力価がよわく作用時間も短いから,かなり高価である.

注意:
作用が短いとはいっても,大量使用では延長.肝障害では確実に延長する.
腎不全なら使用できるというが,データは多くない.遷延無呼吸のおこった症例報告はある.ベクロニウムが“肝臓で代謝を受ける”ことは確実だが,代謝物にけっこうな筋弛緩作用があり,これは腎での排泄に依存している故という.

蛇足:
英語の綴りは“Vecuronium”であって“Curare”からの語源を示唆している.商品名「マスキュラックス」は“Muscle relax ”のつもりだろう.

キーワード:非脱分極性筋弛緩薬,パンクロニウム,循環動態


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諏訪邦夫

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 ベクロニウム(ヴェキュロウニアム) - 諏訪邦夫 [#35] 2001/02/10 17:57



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