電子版麻酔学教科書

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  筋弛緩薬の「プライミング」 #13
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月10日 15時56分
筋弛緩薬の「プライミング」

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語義:
筋弛緩薬の投与の際に,筋弛緩効果のまったく現れない程度の少量をあらかじめ投与しておくと,次の主量投与時の作用発現が著しく速くなる現象.また,それを狙って意図的に少量をあらかじめ投与することをも呼ぶ.
実例:
ベクロニウムを使うとして,
1回に投与する場合,100μg/kg投与で気管内挿管できるようになるのに5分程度を要する.
同じ量を2回に分けて,まずプライミングに15μg/kgを使用し,5分後に85μg/kg(主量)を投与すれば,主量投与後から2分で気管内挿管が可能になる.


使い道:
サクシニルコリンを使いたくない状況で,急速導入挿管したい場合.たとえば,フルスタマクの挿管.
メカニズム:
なぜそうなるのかよくわかっていない.以下は一応の仮説(諏訪の説明)である.
ベクロニウムのような遅い筋弛緩薬は,レセプタとの親和性が高い.投与量が少ないので濃度が低く,レセプタ付近に移動するとすぐに結合してしまう.この反復に時間を要する.(溶解度の高い吸入麻酔薬の導入が遅いのと類似の現象である.)
あらかじめ投与した量(プライミング)が少量でも,長時間経過後にはレセプタのかなりの部分がブロックされる.しかし,その占拠率が安全域以下(レセプタの7割未満しかブロックされていない状況)なら障害はない.たとえば5割程度がすでにブロックされているとすると,そこから挿管レベルのブロック(占拠率9割)に達する時間は大幅に短縮できるというわけである.
参考文献:
Redai I, Feldman SA. Priming studies with rocuronium and vecuronium. Eur J Anaesthesiol Suppl. 1995 Sep, 11: 11-13.
Molbegott L, Baker T. Speed and ease of tracheal intubation: priming with mivacurium compared with succinylcholine. Can J Anaesth. 1995, 42: 780-784.

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諏訪邦夫

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