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東麻酔研究所 質問集(詳細画面)


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タイトル:注射の後の痛みが持続
ご質問 :今年の2月末に堕胎の手術を受けました。その際、全身麻酔の前に”麻酔が効きやすくなるように”との事で、右側のお尻に注射を打たれました。
その後、全身麻酔から覚めるのは早かったのですが、その右側のお尻の辺りから太ももまでが触ってみても感覚が鈍いのです。最初は”しばらく経てば戻るだろう”と思っていたのですが、3月の半ばを過ぎた頃から触ったりするとビリビリと電気が走るような痛みになりました。座ってるだけでもチカチカと痛む事があります。
腰痛からかと思い、先日整形外科へ行ってみてレントゲン等を撮ってみたのですが何も異常はなく、その先生も”原因がわからない”とおっしゃっていました。その時も一応、堕胎の手術を行った事をお話したのですが”ホルモンのバランスが崩れているのでは”と言う事でした。痺れを軽減させるためのビタミン剤を2週間分いただいて、現在服用中です。薬があと1週間ほどで切れるのですがその時もまだ痛みが続くようなら来るようにと言われました。
一度、その手術を受けた産婦人科も受診してみるべきなのでしょうか?
長くなってしまいましたが、宜しくお願いいたします。
返信文 :ひよっとしたら、RSDと呼ばれる状態かもしれません。RSDは reflex sympathetic dystrophy の略で日本語では反射性交感神経性ジストロフィー(異栄養症、萎縮症)といいます。最近では、この呼び方から、CRPS:complex regional pain syndrome日本語で複合性局所疼痛症候群?に移行しているようです。
 ちょっと専門的になりますが、「局所的に起こった損傷に引き続いて発症する疼痛性の病態であり、予想される通常の創傷治癒の経過を越えて続き、たびたび著明な運動機能の減退を起こし、時間とともにさまざまに進行する症候群」と定義されています。
 わかりやすく言いますと、皮膚を切ったり骨折した後、皮膚や骨折は治ったものの、痛みだけが残り腫れや骨の萎縮が起こり、なかなか改善しない状態です。多くは交感神経(自律神経で血管を収縮させる作用がある)が関係していると言われています。
 皮膚切開や骨折など、明らかな神経損傷がなくて生じる場合を Type I(以前はRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)と呼ばれていたもの)、神経が傷つけられた後に生じる場合をType II(以前はカウザルギー(causalgia:灼熱痛)と呼ばれていたもの)と分けられています。hiraさんの場合は、CRPS Type IIにあたるかもしれません。
 
 治療法は、この交感神経を抑制することが主ですが、一旦発症してしまうとなかなか治療は困難なようで、予防が第一といわれています。麻酔科では、硬膜外ブロック(脊髄のそばに局所麻酔薬を注入する方法)、低周波針治療(痛む所に細い針を刺して電気を周期的に1分間に50-100回程度流します)、薬物療法(副腎皮質ホルモン:ステロイド、抗うつ薬、静脈麻酔薬:ケタミン、麻薬等)等が行われています。
 しかし決定的なものはなく、ケースバイケースで患者さんの反応をみながら対応しなくてはならないようです。
 一度、麻酔科(ペインクリニック)を受診されることをおすすめします。

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